コラム

小児の便秘について

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便秘の定義

便秘とは、便が長い時間出ないか、出にくいことをいいます。週に3回より少ない、5日以上出ない日が続けば便秘と考えます。毎日便が出ていても、出す時に痛がって泣いたり、肛門がきれて血が出るような場合も便秘です。腸に便が溜まりすぎると、小さいコロコロの便や、軟らかい便が少しずつ、1日に何回もという状況になります。便を出そうと思っていないときでも便の液が漏れてしまう状態も、便秘症が原因になっていることがあります。

小児の便秘は10人に1人、小学生は3人に1人が便秘と考えられています。離乳の開始や終了の頃、トイレットトレーニングのころ、学校へ通いだした頃に慢性便秘症がはじまりやすいと言われています。

 

 

便秘になると何が悪い?

便意をしばらく我慢していると、出したくなくなるので、そのまま大腸に便が残ります。大腸は、便から水分を吸収する働きがあるので、便はどんどん硬くなり、いよいよ出る時には非常な痛みを伴うことになり、お子さんは益々便を我慢するようになり、悪循環となります。そのようなことが続いていると、常に便が腸(直腸)にある状態が続くことになり、腸がだんだん鈍感になってしまいます。

便秘をどんどんこじらせると、将来的に排便機能を育てることができないため、一生便秘で苦しんでしまうことにもなりかねません。

また、排便習慣がしっかり身についていないと、精神的にも悪影響を及ぼすとされています。イライラや多動、学習障害の原因になったり、ひどい場合には家庭内暴力に発展したりすることもあります。

実際に便秘症をしっかり治療することで、それまで「落ち着きがない」と言われていた子が集中して物事に取り組むことができるようになることもあります。

排便機能

赤ちゃんの頃は全然育っていない排便機能が、オムツはずれに向けて次第に育っていき、小学校高学年になってやっと大人並みになるとされています。つまり、子どものうちは、しっかり排便機能が育つように助けてあげる必要があります。

・便を出すのが怖い、痛い

・漏らして怒られた記憶がある

・遊びを優先したい

・トイレ(大便)に行くのを冷やかされた…

様々な原因で便をこらえると、次第に直腸には多くの便がたまった状態になり、そうすると新しい便が上からやってきても、便意を感じなくなります。

便秘の診断

 便秘症は、便の回数、硬さなどを問診することによって診断しますが、必要に応じて、レントゲン撮影やエコー、CT検査を行う場合もあります。診断の第一歩は、便秘症であるかどうかの確認です。便秘が、1~2ヵ月以上続いている場合には、きちんとした治療が必要となり、「慢性便秘症」と呼ばれます。 一方、普段は便がよく出ているお子さんが、一時的に便秘の状態になっただけの時には、「一過性便秘」といいます。一過性便秘の場合には、浣腸や薬で便を出してあげれば、また元の良い状態にもどる場合がほとんどです。

  • 便が溜まっていると思われる場合

・少量の便が頻繁に出ている場合(肛門周囲に少量の便がついている場合も含む) 

・息んでいるが出ない 

・最後の排便から5日以上排便がない 

・医師がお腹を触って便の塊を触れる

・医師が肛門から入れた指で便の塊を触れる

 

便秘の治療方針

こどもの便秘の治療は、便秘がくせになってしまわないように、お薬を使って排便を助けてあげながら、こどもの排便機能がしっかり育ってくるまで気長に見守ってあげることです。

成人のように運動や、野菜などの食事療法、マッサージなども効果はありますが、どうしても小さなお子さんが相手だと難しいところがあります。

高圧的なトイレットトレーニングや、浣腸を繰り返すと、この悪循環がさらに加速されます。一方、治療によって便を柔らかく保ち、お子さんが「便をするとすっきりする=快便感」を体験し、いつも直腸が空であるようにしていれば、この悪循環をたちきることができます。そのような状態を続けていけば次第に排便感覚も戻ってきて、便秘が改善していきます。

適切に治療を行えば、数日~2ヵ月で「週に3回以上快適に便が出る」状態になります。その状態を続けていると1~2年の間に便秘症が治ることも少なくありません。治療は早く始めたほうが、後の経過がよくなります。便秘症は、一旦よくなっても、再発することが多い病気です。再発した場合にはすぐに治療を再開しましょう。

 

  • 便秘を悪化させることがあるもの

【育児・生活状況の問題】 

強制的トイレットトレーニング、トイレ嫌い、学校トイレの忌避、親の過干渉、性的虐待、家庭環境の変化、いじめなど

【便量の減少と乾燥】

低食物繊維食、慢性的な脱水、低栄養

 

具体的な治療内容

便秘症のお薬は非常に多くあります。

外用薬としては、浣腸液や座薬、内服薬としては、緩下剤、刺激性下剤、整腸剤、漢方薬などがあります。

こどもに対しては、あまり刺激性下剤はお勧めできません。

また、すでに固い便がいっぱい溜まっているお子さんに、内服薬をたくさん飲ませても下に栓が詰まっている状態ですからきついだけです。まずはしっかり浣腸治療を行って、便を出してから内服治療を考慮していきます。

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