コラム

口の中の苦みについて

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苦みを訴えて受診される患者さんがおられます。原因としては、

①逆流性食道炎
②亜鉛不足
③内服薬の影響
④がんの治療中
⑤更年期障害
⑥心因性(ストレス・精神的疾患)
⑦その他

などが考えられます。

① 逆流性食道炎の場合、多くは苦みだけを伴うことは少なく、胸焼けや呑酸(すっぱいものが上がってくる)症状があります。内視鏡検査で確認することも場合によっては必要ですが、丁寧な問診で診断をつけることも可能です。この場合は胃酸分泌を抑える内服薬が有効です。

② 亜鉛が欠乏すると、主に味覚を感知する味蕾(舌の表面にあります)の機能低下をきたすといわれています。味覚障害以外にも皮膚障害や脱毛、免疫機能の低下、貧血などの症状が現れることもあります。血液検査で亜鉛の濃度を調べることが可能です。亜鉛が欠乏しているようであれば、内服による補充療法を行います。

③ 原因となりうる薬物(降圧利尿薬、抗ヒスタミン剤、抗生物質など)の中止や変更を検討します。

④ がんの治療中は薬剤の影響や精神的な要素で苦みを訴えられる方がいます。血液中の亜鉛を測定し低下しているため、内服治療を始めても思ったほど症状が改善しない方を経験しています。⑥や⑦が原因の方も含めて、漢方薬や抗不安薬が有効なこともあります。

⑤ 40歳を過ぎると更年期障害が見られるようになりますが、味覚障害も症状のひとつです。更年期でホルモンバランスの変化や乱れが生じると味を感じる味蕾細胞にも異常が起こり、口の中が苦いと感じやすくなります。

⑥ 過度なストレスや不規則な生活によって自律神経が乱れると、味覚障害が起こることがあります。自律神経は全身のさまざまな器官をコントロールしているため、頭痛やめまい、動悸、発汗、食欲不振などの症状となって現れます。また、最近は仮面うつ病(精神症状より身体症状が先に現れるうつ病)や不安神経症など心因性のストレスによって味覚異常を訴える方も増加しています。

⑦ 風邪による鼻つまりや加齢による唾液分泌量の低下でも起こりえます。また肝機能や腎機能低下、糖尿病の方でも生じうるので血液検査で異常が無いかみておくことは必要と思います。

また、日頃の食生活も大きく影響されます。亜鉛が多く含まれる牡蠣やうなぎ、牛肉・鶏肉、レバー、イワシ、海藻類、しいたけなどを意識的に摂取すると良いでしょう。
亜鉛はクエン酸やビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が上がることが知られていますし、インスタント食品は逆に亜鉛の吸収阻害・排泄促進をする可能性もあり、食べ過ぎには注意が必要です。

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